大判例

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東京地方裁判所 平成11年(ワ)7835号 判決

原告 中村喜久雄

原告 中村千恵子

右両名訴訟代理人弁護士 村田敏

被告 マーシャル諸島共和国

主文

一  本件訴えをいずれも却下する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

一  本件請求の趣旨は、「被告は、原告中村喜久雄に対し二〇〇万円及びこれに対する平成一〇年一一月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を、原告中村智恵子に対し一〇〇万円及びこれに対する平成一〇年一一月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を、それぞれ支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決及び仮執行宣言を求めるというのであり、本件請求の原因は、別紙「請求の原因」のとおりであるが、その要旨は、次のとおりである。

1  原告らは、平成八年七月一九日、被告との間で、原告らがマーシャル諸島共和国の永住権取得を経由した後に、その五年後に原告らがアメリカ合衆国の永住権(以下「アメリカ永住権」という。)を取得することを内容とするアメリカ永住権取得プログラム手続に関する合意(以下「本件合意」という。)をした。

2  平成八年七月二五日、本件合意に基づき、手続に必要な対価料金として、原告中村喜久雄は二〇〇万円を、原告中村千恵子は一〇〇万円を、それぞれ支払った。

3  その後、原告らは、平成一〇年九月八日付書面により、被告に対し、相当期間内に本件合意に基づく債務を履行するように催告した。

4  原告らは、平成一〇年一一月一四日、被告に対し、本件合意を解除するとの意思表示をした。

5  よって、被告に対し、原告中村喜久雄は不当利得金二〇〇万円、原告中村千恵子は不当利得金一〇〇万円及び右各金員に対する契約解除日の翌日である平成一〇年一一月一五日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

なお、原告らは、本件合意は、アメリカ永住権取得のための米国移住プログラムという私人間の委任、準委任又は請負と解され、純然たる私法上の契約であるから、契約当事者である被告がたまたま国家であるからといって主権免除の原則は適用されないと主張している。

二  原告らの主張に従う限り、本件合意の内容は、被告が一定の要件のもとにマーシャル諸島共和国の永住権を原告らに取得させることにより、その五年後にアメリカ永住権の取得を可能にさせるという債務を負うのに対し、原告らが対価として被告に対し合計三〇〇万円を支払う債務を負うというのであり、原告らは、被告が原告らにマーシャル諸島共和国の永住権を付与した後五年経過して、初めてアメリカ永住権を取得することが可能となるにすぎない。

したがって、原告らの主張によれば、本件合意における被告の債務は、原告らに対してアメリカ永住権を取得させることだけを内容とするものではなく、その前提として、原告らについて審査をしマーシャル諸島共和国の永住権を原告らに付与することが、債務の中核的な必要不可欠の要素とされているということができる。

ところで、外国国家に対して我が国の裁判権が及ぶ範囲に関しては種々の見解が示されているが、少なくとも、本件のように自国の永住権を付与するという外国国家の基本的な公法的行為、権力行為に係る民事訴訟については、外国国家が自らの意思によって他国の裁判権に服する場合を除いて、我が国の裁判権は及ばないと解すべきである。

そして、記録によれば、本件において被告には応訴の意思があるとは認められないから、本件には我が国の裁判権は及ばないというほかはない。

もっとも、原告らは、本件合意は、アメリカ永住権取得を目的とする委任、準委任又は請負契約であり、私法上の契約であるから、本件に主権免除の原則は適用されないと主張する。

しかし、右に見たとおり、本件の合意における被告の中核的な債務は、マーシャル諸島共和国の永住権を原告らに対して付与することであり、むしろその他の債務は付随的なものということができるから、原告らの主張は採用することができない。

三  以上のとおりであって、本件訴えは、いずれも不適法であってその不備を補正することができないというべきであるから、民訴法一四〇条によりこれを却下し、訴訟費用の負担について、同法六一条、 六五条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 成田喜達 裁判官 高宮健二 裁判官 阿閉正則)

請求の原因<省略>

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